巴川、新時代。
「巴川コーポレーション」へ
2024年6月、TOMOEGAWAは創業110周年を迎えました。
「紙」から始まったTOMOEGAWAは、「電気物性評価技術」と「抄紙、塗工、粘着・接着、粉体」の生産技術を組み合わせることで、「製紙会社」から「高機能性材料メーカー」へ事業転換を推進してきました。2023年10月には、「化学関連事業」の売上高割合が相対的に大きくなったことから、東京証券取引所における当社株式の所属業種が、「パルプ・紙」から「化学」に変更されました。
これらを踏まえ、2024年1月より「巴川製紙所」から「巴川コーポレーション」に社名を変更いたしました。
中期経営計画3年目の2023年度を振り返って
2023年度は、2025年度(2026年3月期)を最終年度とする、第8次中期経営計画3年目となりました。2022年度に戦略・目標数値を見直し、(1)安定的な収益基盤の確保、(2)構造改革の完遂、(3)成長戦略、(4)投資戦略、(5)SX戦略、(6)DX戦略を主要課題とし、取り組みを進めてきました。
業績につきましては、構造改革の着実な推進に、半導体・ディスプレイ関連事業とセキュリティメディア事業が当初より好調であったことや海外関連売上高の円安効果があったものの、中国経済不振によるトナー事業と機能性不織布事業の低迷により、売上高や営業利益は、当初計画を若干下回る結果となりました。
2024年度も引き続き不透明な事業環境が続く可能性はありますが、構造改革と成長戦略を推進し、第8次中期経営計画の年度目標値(営業利益22億円)達成と、最終年度である2025年度の営業利益35億円の実現に向けた取り組みを進めていきます。
サステナビリティへの取り組み
中期経営計画の主要課題の一つであるSX戦略を推進するにあたり、当社は2023年3月に定めた以下の基本方針のもと、開発型企業である強みを活かした貢献を進めています。
【サステナビリティ基本方針】
私たちは、「誠実」「社会貢献」「開拓者精神」からなる創業精神のもと、これまでもこれからも「新製品・新技術の立ち上げによるお客様満足を通じた利益の最大化」を通じて持続可能な「より良い世界(社会・環境・ガバナンス)」の実現に向けて貢献してまいります。
- 社会的課題への取り組み
- 環境問題への取り組み
- 人権の尊重と人財価値最大化への取り組み
この方針に基づき、当社は、サステナビリティ経営を推進するため、代表取締役社長CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を新設し、各事業部門から提出されたESG関連の環境問題および社会問題に関わる課題を整理分類し、当社として優先的に取り組むべき課題として7つのマテリアリティを特定しました。
- 技術革新による新たな価値創造と生産性向上
- 環境負荷低減の実現
- 安心安全な製品の供給
- パートナーシップの強化
- 構造改革による経営効率アップ
- 人的資本の強化/ダイバーシティ&インクルージョン
- コーポレート・ガバナンス/コンプライアンスの強化
2023年度は2回のサステナビリティ委員会を開催し、既存の組織に加え専門分科会も立ち上げ、以下に述べる当社の技術を活かした環境に貢献する製品の開発や、GHG排出量削減に向けた活動を進めるなど、課題解決に向けた取り組みを進めています。
新製品・新技術による価値創造
7つのマテリアリティでも、当社の独自性として強調したいのが、「技術革新による新たな価値創造と生産性向上」です。
当社グループでは5Gの普及やDXの加速に伴う、高電圧・大電流・高周波数に対応するため、「熱・電気・電磁波」をコントロールするさまざまなソリューションを「iCas」ブランドとして提供しています。
「iCas」ブランドの中でも、熱・電気のコントロール性能を向上させた製品は、SDGsが求めるエネルギー使用量削減への貢献も可能となります。例えば、東京エレクトロン様から環境アワードを頂いたフレキシブル面状ヒーターは、加熱部へ密着して配置可能であることから、省エネ効果を実現しています。この他にもエネルギーの効率的利用につながる製品の開発も進めております。
また、省資源や環境に配慮したブランド「グリーンチップ」製品を開発・拡充しています。木材由来のセルロース繊維を混合した樹脂「グリーンチップ® CMF®」のセルロース繊維を55%混合したグレードは、ポリプロピレン樹脂と比較して、製造から焼却の過程でのCO2排出量の削減が期待できます。
環境課題への対応
世界規模で議論されているカーボンニュートラル実現への対応については大きな課題です。当社は従前よりエネルギーの効率的な利用や省エネに取り組んできており、2023年度では政府目標の2013年度比46%削減を達成しております。また、エネルギー消費量の多い製紙事業からの転換もCO2排出量の削減に大きく寄与しました。さらに、戦後直後から山林経営に取り組み、3,031haに及ぶ社有林を保有しています。これらは、CO2吸収、治山治水、生物多様性保全など、SDGsに貢献する取り組みでもあり、引き続き山林の保全を継続することで、今後も、排出量データの合理性・客観性を更に高めつつCO2排出量削減に取り組み、環境負荷の低減を図り、地球環境保全に取り組んでまいります。
人的資本充実への取り組み
当社は、持続可能な社会への貢献として人的資本の充実も進めています。経営戦略の基本は人財戦略と考えており、「人財」への投資により「人財の価値を最大限に引き出す」ことが企業競争力の向上を導き、中長期的な企業価値向上につながっていくものと考えています。人財育成の促進、多様な人財の活躍、いきいきと働きやすい職場環境づくりのために取り組みを進めています。
さらに、製造現場を中心としたカイゼン活動、業務効率化への取り組みにより、これまで以上に、下記1)⇒2)⇒3)⇒1)⇒・・・の好循環が継続しています。
- 1)承認行為の全社的取り組み(秀逸なカイゼン事例への全社的な賞賛や横展開奨励)
- 2)従業員の意欲やスキルの更なる高揚
- 3)設備の安定性・操業効率・作業効率がアップ⇒生産性が飛躍的に向上
これは、全ての従業員が常に創意工夫を凝らして新しいことに挑戦していこうという活動の表れであり、ここ数年取り組んできた風土改革が着実に成果として現れていると考えています。
引き続き、経営理念の中のビジョンに示した「グローバル視点の提案型ソリューションパートナー」として、「前例にとらわれず、組織の壁を超え、チームと個の力を掛け合わせ、新たな感動を創造する」を実現するために取り組んでまいります。
結び
以上の動きを踏まえ、報告書のタイトルについても、本年より従来の「社会環境報告書」から「サステナビリティレポート」と改めました。
TOMOEGAWAは、全てのステークホルダーの皆様との対話を重視し、説明責任を果たしながら、強固な信頼関係をさらに高めていく所存です。
引き続き新しいレポートへの忌憚のないご意見はもとより、TOMOEGAWAおよびグループ企業への、ご指導、ご鞭撻、ご支援を何卒よろしくお願いいたします。
代表取締役社長